帰国後のフォローについて
渡航移植患者が帰国した後の
医療の受け入れについて
当団体に寄せられる「帰国後に受け入れてもらえる病院はあるのか?」という問い合わせは少なくありません。渡航移植を考える患者様にとっては切実な問題です。
結論から先に申します。
「受け入れ病院は必ずあります」。
確かに海外で腎移植を受けた患者様に対し診療拒否を明言する病院はありますが、これは医師法19条「応召義務」に反する明らかな違法行為です。
移植術を受けた患者様は、術後免疫抑制剤を服用しなければ数日から数週間後に拒絶反応を起こし命を落とすことになります。
そのような患者様を目前に正当な理由なく診療を拒否するのは、医師法19条違反他なりません。
私共国際医療相談室では、患者様の帰国後、当団体スタッフが受け入れ病院まで同行し、診療あるいは入院するまで見届けています。
以下、長文にはなりますが現状と考察を合わせた当団体の見解を記載いたしますのでご一読いただければ幸いです。
厚生労働省の調査にて、海外で臓器移植術を受け帰国し、日本国内で外来通院している患者数が令和5年3月31日時点で543名であると公表されました。
海外渡航患者の実態調査
実数はこの数倍はいると思われますが、何はともあれ海外で移植を受けた日本人が日本国内のどこかの病院に通院している、その数が令和5年3末時点で543名である...と国が認め発表した現実を上記データで確認することができます。
稀に、診療拒否を受けて病院のたらい回しにあった事例が報道されることがあります。「臓器売買の疑いがあるから断られた」など、興味本意の報道なされますが、現実には大半の方はスムーズに診療を受けられています。しかし、円滑に診療を受けられている事実は、多くの他人の興味を引く話題ではないので、わざわざ報じられることもありません。
ところで、上記の渡航者(543名)の内に「厚生労働大臣の認可」を得た上で渡航し移植手術を受けた人は誰もいません。現時点で、臓器のあっせんに関して正式な認可を厚生労働省から得ているのは、「日本臓器移植ネットワーク」という公益社団法人だけです。
しかし「日本臓器移植ネットワーク」は、日本国内における臓器移植希望者とドナーから提供される臓器とのあっせん行っている団体なので、その活動の場は日本国内に限られており、海外での臓器のあっせんや仲介には一切関わりを持っていません。
臓器の選択や采配は、医療機関あるいは現地行政機関にてなされます。
また、非血縁、非婚姻間の生体移植の場合は移植手術自体の可否についても、前述の倫理委員会(第三者委員会)の判断に委ねられます。
臓器移植法第12条に「死体から摘出された臓器をあっせんする者は臓器ごとに厚生労働大臣の認可を受けなければならない」とありますが、そもそも移植手術は、執刀に関わらない第三者を招集した「倫理委員会」において生体から提供を受けた臓器であることを確認し認証を得た上で行われます。
故に「死体から摘出された臓器」と限定されている現行法において厚生労働大臣の認可は不要だと考えられます。
また、移植手術自体の可否についても、前述の倫理委員会(第三者委員会)の判断に委ねられます。
従いまして、海外にて行われる移植術において、当団体が臓器のあっせん行為や働きかけなどには一切関与しておらず、また関与しようがない、というのが現実です。
よって、「海外で臓器移植手術を受けた患者は、その臓器が不法な売買により提供されたものであるから、診療することはできない」とする医療機関の主張は診療を拒否する正当な事由には、なり得ません。
厚生労働省の指針として「他の患者の治療をしており手が離せない」「専門医が不在で適切な治療ができない」等の合理的理由がない限り診療の拒否はできないと各医療機関に通達しています。(昭和30年8月12日付医収第755号長野県衛生部長あて厚生省医務局医務課長回答)
例えば、強盗犯や殺人犯が負傷して病院へ来たとしても「あなたは犯罪者だから治療しません」と診療を断ることはできません。これを医師法19条の「応召義務」といいます。日本では例え死刑囚や犯罪者であっても治療を受けることはできるのです。
ご自身に受け入れ病院の当てがある場合を除き、私どもがご案内する病院へ行かれるのが最良と思います。どうぞ、ご安心ください。
医師の応召義務について、下記アイコンより資料をご参照ください
医師の応召義務について